【ロシアIT】ロシアのIT教育プログラムを受けてみた
皆さん、こんにちは。テクノソリューションです。
日本では小学校で2020年からプログラミング教育が始まりました。 また、学生・社会人向けのプログラミング塾なども増えており、日本でIT教育が盛り上がっていると思います。
ロシアでもIT教育の人気がとても高いです。 中でも、一流IT企業が提供する教育プログラムは世界中から多くの受講者が参加しています。その中でも、Mail.ruグループが提供するサービスである「GeekBrains」のオンラインクラスとウェビナールをそれぞれ1つずつ受講してみました。
Mail.ru GroupとGeekBrainsとは?
Mail.ru Groupは「Yandex(Яндекс)」などと並ぶ、ロシアの一大IT企業の1つです。 フリーメールサービスの「mail.ru」や、ロシア版FBである「Vkontakte(Вконтакте)」、学生ユーザーが多いSNS「Odnoklassniki(Одноклассники)」、さらには、検索エンジンなども提供しています。 CEOはBoris Dobrodeev(Борис Добродеев)です。モスクワ国立大学(Московский государственный университет)の出身で元々は、VkontakteのCEOでした。1984年生まれの36歳にして、一流企業のCEOであり、如何に優秀な人であるかがわかると思います。
GeekBrainsは、Mail.ru Groupが提供しているプログラミング学習サービスです。 AI、Webアプリ、スマートフォンなどといったサービス開発に必要なプログラミング言語、知識、ツール、手法などを学ぶことができます。クラスを受講している企業も多く、ロシア最大の銀行「ズベルバンク(Сбербанк)」や、通信会社「MTS(МТС)」、デリバリーサービスの「Delivery Club」などの社員も勉強をしています。 さらに、授業を全て終了すると証明書が発行されるため、就職の際のアピールポイントとしても利用することができるそうです。
GeekBrainsのプログラム
GeekBrainsは様々なプログラム・クラスを提供しています。 具体的には、Python, Java, JavaScript, C#といったプログラミング言語学習クラスや、アルゴリズムとデータ構造、データベース、web開発フレームワークのクラスなどもあります。また、プログラミング以外にも、マーケティング、デザイン、マネジメント、アナリティクス、ゲーム、経営などといった分野の授業も提供しています。1クラスあたり、約20,000円~30,000円程で受講することが可能です。中には無料で受講できるものもあるので、気軽に始められますね。
GeekBrainsのプログラムの特徴として、「学部(Факультет)」というものがあります。 1つのテーマについて、2年程かけて勉強していくようなコースになっています。 この学部は、「Webアプリ開発」、「AI」、「Android/iOS開発」、「DevOps」、「開発リーディング」、「Webマーケティング」、「人材」等、技術的なものからビジネス・経営よりのものまで、種類がとても豊富です。学部の授業の中には、GPUで有名なNVIDIAやロシアの大手通信キャリアのMegafon (Мегафон)などと提携した授業があるのも、学部の特徴の1つです。 学部の授業料は1か月約10,000円~15,000円となっています。また、後払い制度等もあるので、学生などでも比較的受講しやすい環境が整っていると思います。
GeekBrainsは学部でもクラスでも、講師・メンターにすぐ質問・相談ができます。躓いたときにし、すぐ助けてもらえるため、挫折せずに続けられるのではないでしょうか。
GeekBrainsの授業を受けてみた!
オンラインクラス
無料で受講できる「Java 高速スタート(Java. Быстрый старт)」に取り組んでみました。 形式は、動画を見てプログラミングの勉強をし、最後に出される課題を自分で解いてみるというものです。ちなみに、課題の答えは次の授業の始まりで解説されます。また、授業や課題で疑問点がある場合は、講師に質問をすることも可能です。 授業数は全部で9あり、すべて受講し終わると証明書が発行されます。
それぞれの授業の内容は、
- イントロダクション
- 変数、データ型、if分
- ループ文、「数字予測ゲーム」の作成①
- メソッド
- 「数字予測ゲーム」の作成②
- オブジェクト指向、「雫を捕まえろゲーム」の作成①
- オブジェクト指向、「雫を捕まえろゲーム」の作成②
- オブジェクト指向、「雫を捕まえろゲーム」の作成③
- まとめ
となっています。
JavaやIDEのインストールは自分で行う必要があります。また、動画形式の授業であり、毎回1つのプログラムを作成しており、関数や構文を1つずつ確認していくようなことはありません。そのため、まったくの初心者が挫折をせずに続けるというのは少し難しいような気がしました。
しかし、無料のコースですが、充実した授業内容であり、質問機能もあり、なおかつ、簡単なゲームを作れるので、「開発」のイメージが付きやすそうだと感じました。 また、GeekBrainsのJavaクラスでは、最後にwindowsのネイティブアプリを開発します。日本のプログラミング塾では、最終的な成果物がWebアプリであることが多いと思うので、珍しい印象を受けました。
ウェビナール
「スマートフォンアプリ開発でどのように稼ぐのか?どのように自分でスタートアップを立ち上げるのか?(Как зарабатывать на разработке мобильных приложений? Как запустить свой стартап?)」というウェビナールを視聴しました。ちなみに、GeekBrainsのウェビナールは、全て無料で視聴できます。
約1時間のウェビナールで、コメント欄を利用していつでも質問ができるような形式でした。内容は、「スマホアプリ開発に必要な技術」「ユーザ分析」「マーケティング」「広告」など、技術というよりかはビジネス面の話が多かったです。
ウェビナールを視聴していて感じたのは、若い参加者が多いということです。大学生参加者がいるのはもちろん、10代前半の参加者もちらほらいました。特に、12歳の参加者は積極的に質問をしており、意思・意欲の高さを実感しました。
また、GeekBrainsのウェビナール全体に言えることですが、「起業」を意識したようなものが多い印象があります。少なくないロシア人エンジニア、IT従事者、学生が、テクノロジーを活用した起業に興味を持っているようで、その起業家精神に驚きました。
まとめ
GeekBrainsについてリサーチや、授業を通して感じたことは、「多くのロシア人がITを用いたビジネスに興味がある」ということです。
開講しているクラスや学部には技術的なものだけでなく、ビジネスを進める上で重要な事柄について扱うものも多いです。また、ウェビナールでも起業やサービスの展開といった内容が多く、それらのニーズが高いのだと感じました。
このような「起業家精神」が高いことが、ロシアで多くのイノベーションが起きている1つの要因なのではないでしょうか。
参考資料
【ロシアIT】古都よりイノベーションを。サンクトペテルブルクのITエコシステムの特徴とは?
皆さんこんにちは。テクノソリューションです。
皆さんは、ロシア第2の都市「サンクトペテルブルク (Санкт-Петербург)」をご存知でしょうか。 帝政ロシアの時代は、首都として栄え、現在でも当時のツァーリ(皇帝)が建造した宮殿や、美しい教会などが残っています。
そんなサンクトペテルブルクですが、現在ではロシアのITを支える大都市の1つとなっています。 今回のブログでは、ペテルブルクのITエコシステムについて、簡単に紹介していきます!
教育機関
サンクトペテルブルクは、毎年約28,000人のIT系学部卒業者を輩出しており、その数は「ロシアNo.1」です。 具体的に、どのような大学があるのかを紹介していきます。
1.ITMO大学
ITMO大学(Университет ИТМО)は、ロシア全土でも、とりわけIT教育に力を入れている大学です。 情報工学部 光学部 横断型情報科学部 生物・低温システム学部 の主に4つの学部から構成されています。
ITMO大学には多くの優秀な学生が所属しており、毎年開催されるACM国際大学対抗プログラミングコンテストでは、過去7回も優勝しています。競技プログラミングのトップランカーである、touristこと、コロトケビチ ゲナディ (Короткевич Геннадий)もITMO大学出身です。
2.サンクトペテルブルク国立大学
サンクトペテルブルク国立大学(Санкт-Петербург Государственный Университет)は、ロシアで最も古い大学の1つであり、ロシアを代表する総合大学です。そのため、多くの著名人がこの大学を卒業しており、現ロシア大統領のヴラジーミル・プーチン(Владимир Путин)もその1人です。
サンクトペテルブルク国立大学は、伝統的に数学に強い大学です。 マルコフ連鎖で有名な、アンドレイ・マルコフ(Андрей Марков)や、チェビシェフの不等式のパフヌティ・チェビシェフ(Пафнутий Чебышев)、ミレニアム懸賞問題の1つ「ポアンカレ予想」を証明したグリゴリ―・ペレルマン(Григорий Перельман)などが、サンクトペテルブルク国立大学の数学科出身です。
また、有名なエンジニアやサービスも多々輩出しており、テレグラム(Telegram)を開発したデューロフ(Дуров)兄弟なども卒業生です。
3.サンクトペテルブルク工科大学
サンクトペテルブルク工科大学(санкт-петербургский политехнический университет)は、工学・情報科学を得意とする大学です。
コンピューター科学技術研究所、情報システムテクノロジー学科などの学部・学科があります。
ソフトウェアも強いのですが、ハードウェアの開発にも強く、ロボット工学を学ぶ学生や、大学敷地内のFabLabでガジェットを開発する人等、総合的なモノづくりをする学生も多いです。
IT企業
サンクトペテルブルクには、IT企業のメインオフィスや支店なども多々あります。 こちらも、いくつか有名企業について紹介していきます。
1.JetBrains
チェコのプラハにメインオフィスを構える、JetBrains社ですが、世界中にある研究施設のメインとなるものがサンクトペテルブルクにあります。
そこでは、Androidアプリ開発等で利用されているプログラミング言語「Kotlin」などが開発されました。ちなみに、Kotlinは、サンクトペテルブルクのフィンランド湾に浮かぶコトリン島から名づけられています。
2.Vkontakte
Vkontakte(Вконтакте)は、ロシア版Facebookと言われる、ロシア・CIS諸国で人気のSNSです。 元々は、テレグラムを開発したデューロフ兄弟によって開発されました。現在は、ロシアの巨大IT企業 mail.ruグループの子会社となっています。
ペテルブルクのメイン通りにある、「シンガーハウス」という建物にあることでも有名です。
3.ガスプロム・ネフチ
ガスプロム・ネフチ(Газпром Нефть)は、IT企業ではなく、ロシア最大のエネルギーの会社です。しかし、様々なイノベーションに関わっています。 例えば、交通や自動車、金融などの分野のスタートアップに対するアクセラレーションプログラム「Startup Drive」などを開催しています。
ガスプロム・ネフチのメインオフィスは現在モスクワにありますが、近年はペテルブルクの開発にも力をいれており、タワービルや、株式会社日建設計がデザインしたオフィス複合施設等が建設されています。
イノベーション施設・イベント
最後に、ペテルブルクにあるイノベーション施設や、テック系イベントについて紹介します。
テクノパーク(технопарк)とはロシア政府が支援しているイノベーション施設のことです。 サンクトペテルブルク・テクノパークでは、プロトタイプの実験所や、サイバーセキュリティ、マクロ技術、核反応技術等の開発施設等を提供しています。
その中でも特に有名なサービスがビジネスインキュベーションの「イングリア(ингрия)」です。過去・現在を含めて550以上のスタートアップが所属していました。29億ルーブル(約58億円)の投資が行われており、所属しているスタートアップの収入の総計は約56億ルーブル(約112億円)ほどになるそうです。
2.サンクトペテルブルク国際経済フォーラム
2018年に安倍前首相が参加したことでも有名な国際経済フォーラム(Санкт-Петербургский международный экономический форум)ですが、毎年サンクトペテルブルクで開催されています。 2019年には、世界の145カ国から約19,000人が参加しています。約230件のビジネス関連イベントが発生しており、年々、イベントは盛り上がってきております。 2020年はコロナウイルスの影響でイベントは中止になってしまいましたが、来年以降の開催に期待したいです。
3.サンクトペテルブルク国際イノベーションフォーラム
サンクトペテルブルク国際イノベーションフォーラム(Санкт-Петербугский международный инновационный форум)も、毎年ペテルブルクで開催されるイベントの1つです。 国際経済フォーラムとは異なり、こちらは「イノベーション」にフォーカスを当てています。毎回、約1万人以上の専門家が参加し、産業へのイノベーションの導入などについてディスカッションをしています。
まとめ
以上、古都サンクトペテルブルクを取り巻くテクノロジー開発環境についてです。 これらの大学・企業・施設・イベントはそれぞれ単独で運営されているのではなく、互いに協力し合う関係を築いています。 このように、産官学の連携を取りIT人材・ITベンチャーを育てているのがロシアの特徴です。他の都市にも、様々なエコシステムが形成されています。それは、また別の機会に紹介していきたいと思います!
関連項目
【ロシアIT】ロシアのVR/ARについてまとめてみた
皆さんこんにちは。テクノソリューションです。
VR/ARと聞くと、皆さんはどのようなもの思い浮かべますか? スマホゲームや、Play Stationなどを思い浮かべた人が多いのではないでしょうか?
現在は、娯楽分野での活躍が目立っていますが、他にもネットショッピングや医療、ビジネスシーンなどでもVR/AR技術は活用できると言われています。
今回はロシアのVR/AR技術について、どのようなサービス・企業があるのかまとめていきたいと思います。
Cerevrum
Cerevrumは、ヴァーチャル空間で研修をすることができるVRプラットフォーム「Cerevrum」を提供しています。 ファストフードショップの「バーガーキング」や、ロシア版コストコこと「リエンタ(Лента)」、オーストリアの銀行「ライファイゼン銀行」などがシステムを導入しているそうです。
Cerevrumを用いたバーガーキングの英語研修
VRシステムでは、仮想空間で研修をするだけでなく、研修時間や研修状況を管理・分析することができます。 コロナ禍で研修等も難しくなっていますが、Cerevrumが1つの問題解決の糸口かもしれませんね。
Devar
Devarは、子供向けの教育的なデジタルツールを提供する会社です。また、それらを通して子供にインターネットリテラシーを教えることを目的に活動しています。 主に、AR技術を活用した教育用の本などを提供しています。恐竜や宇宙、人体などをテーマにしたものが大変人気です。画面越しではありますが、動く動物や、恐竜、微生物などを観察することができます。
Devarの人気なAR恐竜図鑑
DevarとCerevrumは、世界的なレイティングである「Jobs for the Future 2020」に選ばれています。今後の発展に期待できますね。
WayRay
WayRayは、ホログラフィックARを用いて窓をARデバイスに変えるツールを提供する会社です。ロシア生まれのスタートアップですが、スイスにメインオフィスを構えており、ドイツ、アメリカ、中国などでもサービスを展開するなど、すでにグローバルな活躍をしています。 WayRayはホログラフィックARを主に、自動車分野で利用しています。車のフロントガラスに、現在の車の位置や、スピード、地図や行先などを表示し、運転のアシストをしてくれます。他には、家の窓から見える景色を拡張するようなシステムもあります。
WayRayの自動車用ARナビゲーション
WayRayの活躍で、今後車の運転がさらに楽になると良いですね。
まとめ
ロシアにも多くのVR/ARサービスがあることがわかったのではないでしょうか。 また、娯楽だけでなく実生活やビジネスで役に立つサービスも多いことがわかったのではないでしょうか。
VR/AR技術はまだまだ発展途上です。今後、技術がさらに発展し、生活がより豊かになるのが楽しみですね。
参考文献
【ロシアIT】ロシア人によって作られた有名ソフトウェアをまとめてみた 第三弾
皆さんこんにちは。 テクノソリューションです。
今回は、ロシア人によって作られた有名ソフトウェアの第三弾として、主にJetBrains社に注目して紹介していきたいと思います。
1. JetBrainsとは?
JetBrainsは、「プロフェッショナルなソフトウェア開発をより生産的で楽しいものにする」を目標に、統合開発環境やプログラミング言語等を開発している会社です。 メインオフィスはチェコ共和国のプラハにありますが、セルゲイ・ドミトリエフ (Сергей Дмитриев)、エブゲーニー・ベリャイエフ (Евгений Беляев)、ヴァレンティン・キピトコフ (Валентин Кипятков)のロシア人3人によって起業された会社で、ロシアととても所縁の強い企業です。 プラハを除き、ロシアのサンクトペテルブルク・モスクワ・ノヴォシビルスク、ドイツのミュンヘン、アメリカのボストン・フォスターシティ・マールトン、の7つの地域に研究所があります。この中で、研究の中心を担っているのがサンクトペテルブルク研究所で、この研究所からは様々なサービスが生まれています。
2. JetBrainsの有名なソフトウェア
JetBrains社は様々なソフトウェアを世に出しています。今回はそれらの中でも特に有名な、Kotlin, IntelliJ IDEA, PyCharmについて紹介していきます。
1. Kotlin
Kotlinは2011年7月20日にJetBrains社によってリリースされたプログラミング言語です(公式リリースは、2016年)。 Androidの開発言語ということもあり、Kotlinをご存じの方は多いと思います。 主に、JVM(Java Vertical Machine)上で動作するプログラミング言語で、JAVAの資産を残したまま、モダンな言語で開発ができる等の特徴もあります。
Kotlinは、サンクトペテルブルク研究所に所属する、アンドレイ・ブレスラフ (Андрей Бреслав)、ドミトリ・ジェメロフ (Дмитрий Жемеров)の2人が中心となって開発されました。 JetBrains社がJavaで開発をする上でいくつかの不満点があった、プログラミング言語の開発に興味があった、という2つの理由からKotlinは開発されました。
Kotlinという名前は、Javaがインドネシアの島の名前にちなんでつけられたのと同じように、フィンランド湾にある「コトリン島」から付けられました。
比較的新しいプログラミング言語ですが、今後のさらなる発展やコミュニティの活性化などに期待したいですね。
2. IntelliJ IDEA
JetBrainsと聞くと、IntelliJ IDEAを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。 IntelliJ IDEAは、主にJavaなどのプログラミング言語に対応した統合開発環境です。 初出は2001年で、約20年にもおよぶ長い歴史があるエディタでもあります。
IntelliJ IDEAには、有料版である IntelliJ IDEA Ultimateと、無料でOSSでもあるIntelliJ IDEA Communityの2つがあります。有料版は、最初の1年間は約6万円弱かかってしまいますが、Spring等のフレームワークが使える、JavaScript, TypeScriptの開発ができる、DBツールを使える等の大きなメリットもあります。
JAVA向けIDEには様々なものがありますが、IntelliJ IDEAの人気は最近高まりつつあります。皆さんも使ってみてはいかがですか?
3. PyCharm
PyCharmは、PythonのIDEです。ちなみに、JetBrains社は他にもPHP向けのPhpStromや、Goに特化したGoLandなどのIDEも提供しているのですが、無料版が存在するのは、前に紹介したIntelliJ IDEAとPyCharmの2つのみです。
PyCharmの特徴は、便利なコード自動補完機能や、リアルタイムのエラー・警告チェック、関数の検索機能など、とにかく開発のアシストが充実している点です。 また、IPythonにも対応しており、JupyterNotebookと連携し、PyCharm上からコーディングすることができます。
無料版のPyCharm Communityでも十分に快適な開発を行えますが、有料版であるPyCharm Professionalを使えば、Webアプリ開発やDBツール、リモート開発支援なども受けることができます。
開発業務を主にPythonで行っている方は、PyCharmを利用してみてはいかがですか。
まとめ
ロシア人エンジニアによって作られた有名ソフトウェアということで、今回(第三弾)は、JetBrains社に焦点を当て紹介をしていきました。
JetBrains社のサービスは、すべて「開発者がより良い開発を行うためのツール」であり、本当にディベロッパのことを第一に様々な製品を展開しているのだなと感じました。
また、世界的にもエンジニア輩出数が多いロシアだからこそ、生まれた会社でもあると感じました。
第一弾、第二弾はこちらから!
参考サイト
【価値観カード】「Wevox Values Card」が想像以上に良いツールだった
皆さん、こんにちは。テクノソリューションです。
突然ですが、価値観カードはご存じですか? 様々な価値観が書かれたカードのことで、ゲームをプレイしながら、自分の価値観について分析することができたり、他の人の考え方を知ることができたりすることができます。
テクノソリューションでは、2020年度上半期が過ぎる直前に、この半年間の事業活動に対して、自分たちを見直す機会を作る目的で、「Wevox Values Card」という価値観カードのオンライン版(無料)で遊んでみました。
1. 価値観カードとは
既に少し述べましたが、価値観カードとは、多種多様な考え方が書かれたカードのことです。 テクノソリューションで使った、Wevox Values Cardには、「喜び」・「経験」・「友情」等、89種類もの価値観が用意されています。 遊び方も1つではなく、テーマを設けたり、オリジナルの遊び方を考えたりと様々な楽しみ方があります。
今回は、テーマを「仕事をする上での価値観」とし、最もスタンダードな方法で遊びました。以下が、その遊び方の簡単な説明です。
- プレイヤーに5枚カードを配る。残りのカードは山札とし、場の真ん中に置く。
- 最初のプレイヤーは山札からカードを一枚引き、6枚の手札から最も自分の価値観と遠いものを捨て場に置く。
- 次のプレイヤーは、山札から1枚、もしくは、捨て場から1枚カードを取り、最も自分の価値観と遠いカードを捨て場に置く。山札がなくなるまで、プレイヤーを変え、手順3. を繰り返す。
- 山札がなくなったら、カードを公開し、なぜそのカードを残したのか等、自分の価値観について伝える。他の人が質問をすることも可能。
また、現在、Wevox Values Cardでは、無料のオンライン版がリリースされています。 テレビ会議システムで、社員同士が話をしながら、価値観カードで遊ぶことができます。 テレワークを行っている社員とリアルに会えなくても、オンラインで遊ぶことができるので、とても便利ですね。
2. ゲームの結果と感想
Wevox Values Cardの特徴は、結果を1つの画像として保存したり、シェアしたりできる点です。 その機能を使い、テクノソリューションのメンバーがどのような価値観を持っているのか紹介していきたいと思います。
1. 坂口さん
今回のお題は「仕事における重要な価値観」ということでしたので、まず「健康」を選びました。何をするにも、健康でいることが大前提となります。 つぎに「ビジョン」を選びました。経営者として最も重要なことは、社会への貢献です。私達の仕事を通じて、社会にどのような便益をもたらすことができるのかを言葉として明確にする必要があります。従業員はもちろんのこと、顧客やパートナーにもご理解いただけなければ、貢献などできません。
3番目には、「プロフェッショナル」です。ビジョンを実現するためには、私たち個人としても、企業としても専門性が必要です。私たちは情報技術のプロとして、痒いところに手が届くサービスを提供していきたいと考えています。
4番目と5番目は、「信頼」と「感謝」です。人間社会は、この2つで成り立っていると言っても過言ではありません。相手を信頼し、相手からも信頼される。相手に感謝し、相手からも感謝される。ヒトとヒトとのつながりは、信頼と感謝から成り立っていると考えています。
まずは、テクノソリューションのリーダー、坂口さんでした。 社員を率いるという役職であり、その上で大切にしていることを選んでくださいました。 特に、「感謝」と「信頼」で人間関係が成り立つと考えているそうですが、確かにそうだなと、納得できるとともに、自分はちゃんとそうできているかと振り返る良いきっかけにもなりました。
2. 渡辺さん
同じ時間軸を仕事も家族も共有している。仕事も「家族」も自分で選んだものだから、どちらかを犠牲にしたくない。両立のためには「計画性」は必須と思われる。(もちろん計画の変更はありだが、あくまでも改善が前提)
自分の過去の仕事や業務内容は、常に新しいこと(業務内容、OSや言語、ハードウェア等全て)が短期間に変わることが多かった。そのような状況では、躊躇していては進めない。このような場合、行動を起こすために、「勇気」はきっかけ、「情熱」はモチベーション、「活性化」は風化を防ぐために必要なメンテナンスが必要と思われる。
「論理的」「知性」等、捨てるか取り入れるか迷うカードもあったが、「作業に紐付くこと」や「メソッドを表すもの」は部分的であるとして対象から外した。
個人的に<行き当たりばったり>は嫌いではないけれどそれはあくまで遊びの範疇。消費された時間を後で後悔しないための努力とは、先を見越して計画を立てることが前提だと思っている。どちらに舵を切るべきか、どちらに舵を切ったところで先が見えているわけでもないし、正解である保証もないのだから「勇気」を振り絞って飛び込むしかないわけで、それも家族のためであり、選んだ仕事への責任でもあると思っている。
開発チームのリーダー渡辺さんは、「家族」と「仕事」の両立を大切だと考えていることが良くわかりました。「計画性」がプライベートと仕事を両立するために必要であるとおっしゃっていましたが、開発業務をする上でも、計画性は大切だと思います。私は、計画を立ててもなかなかそれ通りに進まないことも多いので、今後、見習っていきたいと思います。
3. 古橋さん
まず、以下の3つを取り込んだアイデア(サービス)を考えることが世の中に必要なサービスに必要と考えた。
◯偶発性
→周りの状況(現在発生している課題)を取り込める柔軟性
→偶然な要素があったほうが面白そう。
◯貢献
社会貢献にならないサービスは余り意味がない。
世の中の役に立つものでないと実用化されても利用されない。
◯グローバル
ITを利用する前提の場合、世界的な視点が必要。
上記の3つから創造したアイデアやサービスを実現するために必要な要素として下記を選択。
◯思考
行動する前に下記を考える。
・どうやったら実現できるか、成功率が高くなるか。
・どの程度の規模、コスト(労力)が必要か。
・本当に考えたサービスが必要か?等々。
◯行動
思考したことを実行する。最も大事である。
次にエンジニアである古橋さんです。エンジニアの仕事は、ITの力を使い、サービスを作っていくことです。古橋さんは、そのサービスを作っていく上でどのようなことが大切と考えるかが、カードから分かってきますね。 「偶発性」が入っていることが興味深いですね。様々なサービスの開発秘話を見ると、たまたまやっていたことや、たまたま感じたことから生まれたものが多いような気もします。普段の生活の中の偶発的なことに注目することがエンジニアにとって大切なことの1つなのかもしれませんね。
4. 松浦
最後に、私、松浦のカードについてです。
アルバイトという形で開発業務に携わっていますが、作業をしていると様々な課題に直面します。それの解決をするにあたって、ごり押しをすることもできることも多いです。しかし、例えば、保守性や効率、速度などに気を付けて、「工夫」をしながら開発をすることが大切であると思い、「創造性」を選びました。また、私はまだまだ経験が浅いので、普段の業務や課題、その解決の道筋で様々な「発見」があります。それを見逃さずに、自分の体験として積み上げていくことが重要だと考えています。そういった「工夫」や「発見」を繰り返し、スキルやサービスの質、チームや会社が「変化」をしていくことが、働くことの1つの側面だと思います。そして、働く上でのモチベーションが「喜び」であると思います。例えば、製品に対する感謝や、上司やチームメンバーからの感謝などです。もちろん、自分から相手に喜びを与えることも忘れてはいけないと思います。最後に、これら4つの要素がある環境でも、そこが自分にとって居心地の悪い場所であれば、逆に不健康である気がします。今までのアルバイトでも「心地良さ」があった場所の方が、長く続けられていることも、このカードを選んだ理由の一つです。
まとめ
今回、Wevox Values Cardをプレイしてみて、自己分析ができ、また、他のメンバーの考え方を知ることもでき、とても満足に感じました。 またいつか、遊んでみたときに、自分の考えや、周りの価値観がどのように変わるのかも気になるところです。 Wevox Values Card Onlineでしたら、無料で体験ができるのも魅力の1つだと思います。(2020/9/10現在)
テレワーク中の方は、オンライン版で、オフィス勤務が始まっている方は通常のカード版で、価値観カードで遊んでみると様々な発見があって、楽しめると思います。 ぜひプレイしてみてはいかがですか。
【ロシアIT】ロシア人によって作られた有名ソフトウェアをまとめてみた 第二弾
皆さん、こんにちは。テクノソリューションです。
以前、ロシア人によって作られた有名ソフトウェアをまとめました。
今回は、その第二弾として、3つ程ロシア産のソフトウェアやアプリケーションについてまとめていきたいと思います。
Evernote
まずは、世界的に有名なメモアプリ「Evernote」です。Evernoteはアメリカの企業ですが、創業者のステパン・パチコフ(Степан Пачиков)は旧ソ連出身のエンジニアです。
ステパンは、ノヴォシビルスク国立大学 (Новосибирский Государственный Университет)、トビリシ国立大学 (Тбилисский Государственный Университет)(ジョージア)で応用経済学の学位を取得後、モスクワ国立大学 (Московский Государственный Университет) で応用経済学・数理経済学の博士号を取得しました。 大学院卒業後は、ParaGraphというApple Newton向けの手書きメモアプリを作る会社に就職し、1992年にシリコンバレー支社を立ち上げ、渡米しました。その後、2002年にステパンが立ち上げた企業がEvernoteです。
Evernoteは、ステパンの「記憶を忘れずに留めておきたい」という思いから生まれたサービスです。現在もサービスは成長を続けており、2億2500万人ものユーザーに利用されています。
ITが発達するとともに、情報量もどんどん増えています。膨大な情報をまとめて、個人でもチームでも必要な情報を管理するためには、もってこいのサービスではないでしょうか。
FaceApp
次は、スマートフォン向けアプリの「Face App」です。 深層学習を用いて写真を加工する「ディープフェイク」と呼ばれるAI技術によって、対象となる人物の写真を、性別を入れ替えたものや、年をとったもの、若返ったものに加工することができます。
FaceAppは、ヤロスラフ・ゴンチャロフ (Ярослав Гончаров) によって開発されました。ヤロスラフは、サンクトペテルブルク国立大学 (Санкт-Петербургский Государственный Университет) の数理工学科の出身です。学部2年からエンジニアとして働き始め、大学卒業後は、ロシアの有名なアプリ開発会社のSPB Softwareや、Microsoft、Yandexで様々な開発に携わったそうです。2011年にヤロスラフが働いていたSPB SoftwareがYandexに買収された際、自分の会社を作ることを決意し、2014年にWireless Labを立ち上げました。
起業3年後に、8ヶ月の期間をかけて開発したアプリがFaceAppです。リリースしてから2年後(2019年)に、FaceAppは世界的に話題になりました。現在、世界154の国々でアプリが利用されているそうです。
AIの発展によって、FaceAppもどんどん進化をしていくと思います。今後の動向に目が離せないですね。
Star Walk 2
最後に、スマホ向けアプリの「Star Walk 2」です。 Star Walk 2は、AR技術を用いて、星座や惑星、人工衛星などの夜空を観察することができる教育向けアプリケーションです。
このアプリは、Vito Technologyというソフトウェア会社によって開発されました。現在は、ロシア・アメリカ・ドイツに拠点を持っていますが、元々はシベリアにあるロシア第三の都市ノヴォシビルスクから始まった企業です。
Vito Technology は、Star Walk 2以外にも、太陽系について学べるSolar Walk 2、子供向け教育アプリStar Walk Kidsなどもリリースしています。また、多くのアプリがそのコンセプトや、デザインなどが評価され、様々な賞を受賞しています。
年齢を重ねると、夜空を見上げる機会も少なくなると思いますが、Star Walk 2を使って、星の観察をしてみるのもいいかもしれませんね。
まとめ
人気なサービスや、アプリの中にも意外とロシア生まれのものがあることがわかってのではないでしょうか。
今後も、ロシア人や旧ソ連圏で開発されたソフトウェアを見つけましたら、紹介していくつもりです!よろしくお願いいたします。
参考サイト
- https://ru.wikipedia.org/wiki/%D0%9F%D0%B0%D1%87%D0%B8%D0%BA%D0%BE%D0%B2,_%D0%A1%D1%82%D0%B5%D0%BF%D0%B0%D0%BD_%D0%90%D0%BB%D0%B5%D0%BA%D1%81%D0%B0%D0%BD%D0%B4%D1%80%D0%BE%D0%B2%D0%B8%D1%87
- https://evernote.com/intl/jp/about-us
- https://www.linkedin.com/in/yaroslavgoncharov/?originalSubdomain=cy
- http://www.spletnik.ru/culture/media/91071-yaroslav-goncharov-chto-my-znaem-o-razrabotchike-prilozheniya-faceapp-sostarivshego-ves-mir.html
- https://en.wikipedia.org/wiki/Vito_Technology
- https://vitotechnology.com/index.html
【ロシアIT】なぜロシアでAI開発が盛んなのか考察してみた (後半)
前半
この記事の後半の内容です。
ロシアのAIサービス
ここまで、ロシアに高度なAI技術ある理由を考察していきましたが、実際にはどのようなサービスや成果があるのかを見ていきたいと思います。
・ヤンデックス (Яндекс/Yandex)
ヤンデックスは、ロシア版Googleとも言われる巨大IT企業です。ヤンデックスの提供する検索エンジンは、旧ソ連圏を中心に人気で、ロシアでのシェア率は約50%ほどです[6]。 検索エンジン以外にも、様々な分野のサービスを提供しており、AIの研究開発も盛んです。例えば、PaaSであるYandex Cloud (Яндекс Облако)では、下記のようなサービスが提供されています。
Yandex Specchkit 音声の自動生成・音声認識サービス Yandex Translate 自動翻訳サービス Yandex Vision 画像認識サービス
さらに、自動操縦車の研究も行っており、スコルコヴォ内の道路で運転テストが行われているそうです[7]。
・NtechLab
NtechLabは、顔認識アルゴリズムを研究しているスタートアップ企業です。NtechLabの提供する顔認識アルゴリズムの精度はかなり高く、2017年にはGoogleを抜いた[8]と話題になりました。 現在でも、米国情報高等研究開発活動 (IARPA: Intelligence Advanced Research Projects Activit) では1番目、Amazonでは3番目に高いベンチマークスコアを出していると評価されています。 “FindFace”と呼ばれるソフトウェア開発キットや、動画解析・顔認証ソフトウェア “FindFace Security” を提供しています。2018年に開催されたFIFAワールドカップ ロシアでは製品が実際に利用されました。訪問者、約200万人の顔を解析したそうなのですが、顔の認識にかかった時間は約2秒、予測精度は99.4%とかなり良い結果となっています。[9]
・Mivar (Мивар)
Mivarは、主に自然言語処理について研究開発をしている企業です。 Mivarとは、“Multidimensional Informational Variable Adaptive Reality”、つまり、「多次元情報的な可変適応現実」 の略で、社名であるとともに、独自アルゴリズムの名称です。簡単にアルゴリズムを説明すると、目的・特徴・関係の3次元空間を利用した予測をするモデルのことです[10]。 Mivarでは主に、文章の意味や感情等を読み取るアルゴリズムを開発しています。製品としては、Mivar-based approachを用いたナレッジモデリング構築ソフトウェア “Wi!Mi!” や、自然言語処理・セマンティック分析プラットフォーム “Tel!Mi” などを提供しています。
言語はロシア語のみに対応ですが、以下のサイトから簡単なロシアのAI市場マップを見ることができます。
Карта российского рынка искуссвеного интеллекта
Mail.ruグループや、Avitoなどロシアを代表する大手IT企業から、様々なイノベーションに取り組むスタートアップなど、多くの企業が人工知能の研究開発に取り組んでいることがわかると思います。 企業ページによっては、英語対応のものもあるので、どのようなサービスがロシアにあるのか、気になる方は見てみてはいかがですか。
まとめ
元々ある、高い数学力や高度な教育環境、国による政策などから、ロシアの高度なAI技術は支えられていることがわかったのではないでしょうか。
教育・ITのエコシステムが整備されているため、レベルの高い学生や若い研究者・開発者の育成がされている点は、特に注目すべき点だと思います。
日本も、数学力は高く、研究開発の質も良いと思います。しかし、プログラミング・IT教育の遅れや、高度人材の減少等、「教育」という面においては、ロシアに遅れを取っている印象があります。
日本が抱えるその社会的課題を、ロシアと協力しながら解決していけるよう、今後も頑張っていきます。
参考サイト
[6]Mobile Search Engine Market Share Russian Federation
[7]Беспилотник на дорогах Сколково
[8]Russia No. 1 In Facial Recognition, According To Official Washington Spycraft Techies
[9]VIDEO ANALYTICSAT FIFA 2018
[10]Mivar-based technology