【ロシアIT】古都よりイノベーションを。サンクトペテルブルクのITエコシステムの特徴とは?

皆さんこんにちは。テクノソリューションです。

皆さんは、ロシア第2の都市「サンクトペテルブルク (Санкт-Петербург)」をご存知でしょうか。 帝政ロシアの時代は、首都として栄え、現在でも当時のツァーリ(皇帝)が建造した宮殿や、美しい教会などが残っています。

そんなサンクトペテルブルクですが、現在ではロシアのITを支える大都市の1つとなっています。 今回のブログでは、ペテルブルクのITエコシステムについて、簡単に紹介していきます!

教育機関

サンクトペテルブルクは、毎年約28,000人のIT系学部卒業者を輩出しており、その数は「ロシアNo.1」です。 具体的に、どのような大学があるのかを紹介していきます。

1.ITMO大学

ITMO大学(Университет ИТМО)は、ロシア全土でも、とりわけIT教育に力を入れている大学です。 情報工学部 光学部 横断型情報科学部 生物・低温システム学部 の主に4つの学部から構成されています。

ITMO大学には多くの優秀な学生が所属しており、毎年開催されるACM国際大学対抗プログラミングコンテストでは、過去7回も優勝しています。競技プログラミングのトップランカーである、touristこと、コロトケビチ ゲナディ (Короткевич Геннадий)もITMO大学出身です。

2.サンクトペテルブルク国立大学

サンクトペテルブルク国立大学(Санкт-Петербург Государственный Университет)は、ロシアで最も古い大学の1つであり、ロシアを代表する総合大学です。そのため、多くの著名人がこの大学を卒業しており、現ロシア大統領のヴラジーミル・プーチン(Владимир Путин)もその1人です。

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サンクトペテルブルク国立大学

サンクトペテルブルク国立大学は、伝統的に数学に強い大学です。 マルコフ連鎖で有名な、アンドレイ・マルコフ(Андрей Марков)や、チェビシェフの不等式のパフヌティ・チェビシェフ(Пафнутий Чебышев)、ミレニアム懸賞問題の1つ「ポアンカレ予想」を証明したグリゴリ―・ペレルマン(Григорий Перельман)などが、サンクトペテルブルク国立大学の数学科出身です。

また、有名なエンジニアやサービスも多々輩出しており、テレグラム(Telegram)を開発したデューロフ(Дуров)兄弟なども卒業生です。

3.サンクトペテルブルク工科大学

サンクトペテルブルク工科大学(санкт-петербургский политехнический университет)は、工学・情報科学を得意とする大学です。

コンピューター科学技術研究所、情報システムテクノロジー学科などの学部・学科があります。

ソフトウェアも強いのですが、ハードウェアの開発にも強く、ロボット工学を学ぶ学生や、大学敷地内のFabLabでガジェットを開発する人等、総合的なモノづくりをする学生も多いです。

IT企業

サンクトペテルブルクには、IT企業のメインオフィスや支店なども多々あります。 こちらも、いくつか有名企業について紹介していきます。

1.JetBrains

チェコプラハにメインオフィスを構える、JetBrains社ですが、世界中にある研究施設のメインとなるものがサンクトペテルブルクにあります。

そこでは、Androidアプリ開発等で利用されているプログラミング言語「Kotlin」などが開発されました。ちなみに、Kotlinは、サンクトペテルブルクフィンランド湾に浮かぶコトリン島から名づけられています。

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2.Vkontakte

Vkontakte(Вконтакте)は、ロシア版Facebookと言われる、ロシア・CIS諸国で人気のSNSです。 元々は、テレグラムを開発したデューロフ兄弟によって開発されました。現在は、ロシアの巨大IT企業 mail.ruグループの子会社となっています。

ペテルブルクのメイン通りにある、「シンガーハウス」という建物にあることでも有名です。

3.ガスプロム・ネフチ

ガスプロム・ネフチ(Газпром Нефть)は、IT企業ではなく、ロシア最大のエネルギーの会社です。しかし、様々なイノベーションに関わっています。 例えば、交通や自動車、金融などの分野のスタートアップに対するアクセラレーションプログラム「Startup Drive」などを開催しています。

ガスプロム・ネフチのメインオフィスは現在モスクワにありますが、近年はペテルブルクの開発にも力をいれており、タワービルや、株式会社日建設計がデザインしたオフィス複合施設等が建設されています。

イノベーション施設・イベント

最後に、ペテルブルクにあるイノベーション施設や、テック系イベントについて紹介します。

1.サンクトペテルブルクテクノパーク

テクノパーク(технопарк)とはロシア政府が支援しているイノベーション施設のことです。 サンクトペテルブルク・テクノパークでは、プロトタイプの実験所や、サイバーセキュリティ、マクロ技術、核反応技術等の開発施設等を提供しています。

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サンクトペテルブルクテクノパーク

その中でも特に有名なサービスがビジネスインキュベーションの「イングリア(ингрия)」です。過去・現在を含めて550以上のスタートアップが所属していました。29億ルーブル(約58億円)の投資が行われており、所属しているスタートアップの収入の総計は約56億ルーブル(約112億円)ほどになるそうです。

2.サンクトペテルブルク国際経済フォーラム

2018年に安倍前首相が参加したことでも有名な国際経済フォーラム(Санкт-Петербургский международный экономический форум)ですが、毎年サンクトペテルブルクで開催されています。 2019年には、世界の145カ国から約19,000人が参加しています。約230件のビジネス関連イベントが発生しており、年々、イベントは盛り上がってきております。 2020年はコロナウイルスの影響でイベントは中止になってしまいましたが、来年以降の開催に期待したいです。

3.サンクトペテルブルク国際イノベーションフォーラム

サンクトペテルブルク国際イノベーションフォーラム(Санкт-Петербугский международный инновационный форум)も、毎年ペテルブルクで開催されるイベントの1つです。 国際経済フォーラムとは異なり、こちらは「イノベーション」にフォーカスを当てています。毎回、約1万人以上の専門家が参加し、産業へのイノベーションの導入などについてディスカッションをしています。

まとめ

以上、古都サンクトペテルブルクを取り巻くテクノロジー開発環境についてです。 これらの大学・企業・施設・イベントはそれぞれ単独で運営されているのではなく、互いに協力し合う関係を築いています。 このように、産官学の連携を取りIT人材・ITベンチャーを育てているのがロシアの特徴です。他の都市にも、様々なエコシステムが形成されています。それは、また別の機会に紹介していきたいと思います!

関連項目

technosolution.hatenablog.com